Geoffrey B. Smallの2026-27年秋冬コレクションからこちらのアイテムをご紹介します。
最初に見た印象は、ダブルブレストのジャケット。
ただ、いわゆるジャケットらしい硬さはあまりありません。
襟をなくしたVネックの形。
少し低めに付けられたボタン。
前身頃の落ち方。
そのあたりを見ていくと、ジャケットというより、カーディガンに近い感覚で羽織れる服だと分かります。
でも、ただ柔らかいだけではありません。
生地に力があり、仕立てにも芯があります。
着る人に寄り添いながら、服としての輪郭はきちんと残っている。
そのバランスが、このジャケットの良さだと思います。
そして、このモデルはHUESのためだけに作られたワールドエクスクルーシブピース。
世界で製作されたのは、この1着のみです。
ベースになっているのは、Geoffrey B. Smallが長年研究してきたリラックスフィットのダブルブレストジャケット。
ただし、クラシックなダブルブレストをそのまま作っているわけではありません。
襟をなくし、首元をVに開くことで、かなり軽い印象になっています。
ボタンは6つ。
位置を少し下げることで、前を閉じても堅苦しくならず、開けた時にも自然に布が流れます。
このあたりの作り方は、Geoffreyらしいところです。
テーラリングを大切にしながら、それを特別な場面だけのものにしない。
日常の中で自然に着られるように、少しずつ形をずらしている。
遠目にはシンプルに見えるのに、近くで見るほど普通ではない。
この服も、まさにそういう一着です。
生地は、イタリア・ヴィチェンツァのLuigi Parisottoによる特別なダブルフェイス素材。
表側には、インディゴで染められた高密度のコットン。
裏側には、ピュアウール。
コットンとウールを一枚の生地として織り上げた、かなり贅沢な素材です。
表面にはインディゴらしい深い色があり、触るとウールの柔らかさが伝わってきます。
しっかりとした厚みはありますが、重たく沈む感じではありません。
むしろ、手に取ると想像よりもしなやかです。
完成後には、アトリエで、一点ずつ手作業で洗いをかけています。
洗い、形を整え、さらに手を入れていく。
そうすることで、新品でありながら、どこか着込まれた服のような落ち着きが生まれています。
インディゴの色の濃淡や、糸の張り、少しの揺らぎ。
それらは均一に整えられた工業製品とは違う、この生地の表情です。
最初から完成されすぎていない。
着る人の時間が入る余地がある。
そういう生地です。
裏地には、イタリア・コモのブレナ社の16匁のシルクラソサテンを使用。
プリントは「Geometrica Sessanta」。
1970年代のミラノの幾何学模様を思わせる、少し知的で、少し湿度のある柄です。
表からはほとんど見えません。
でも、袖を通した時の滑りや、脱いだ時にちらっと見える内側の景色が、この服をかなり特別なものにしています。
フロントのパッチポケットも、内側までコモシルク。
手を入れた時の感触が違います。
ポケットは手縫いで本体に取り付けられ、負荷のかかる部分にはシルク糸で補強が入っています。
内ポケットも手作業でカットされ、丁寧に仕立てられています。
ボタンは、イタリア・パルマのフォンタナのリアルホーンボタン。
ボタンホールは、シルク糸で手縫い。
一つ作るのに10分から15分ほどかかる、手間のかかる仕様です。
こうした部分は、ぱっと見ただけでは分かりません。
でも、着ているうちに少しずつ効いてきます。
ボタンを留める時。
ポケットに手を入れた時。
脱いで椅子に掛けた時。
そのたびに、きちんと作られている服だと感じます。
シルエットはゆったりしています。
ただ、大きく見せるためのゆとりではありません。
肩の力は抜けていますが、だらしなく落ちる感じはありません。
身幅にも余裕がありますが、身体から離れすぎない。
歩いた時には裾が少し遅れて動き、止まるとまた静かに形が戻る。
この動きがとても良いです。
前を閉じると、ダブルブレストらしい落ち着きが出ます。
ただ、襟がない分、重くなりすぎません。
シャツの上に着てもいいですし、薄手のニットの上から羽織ってもいい。
もう少し寒くなれば、コートの内側に着ても面白いと思います。
着用感は、見た目よりも軽いです。
ダブルフェイスの生地なので、しっかりした安心感はあります。
でも、肩に重さが乗る感じではありません。
着始めは少し形があります。
そこから少しずつ柔らかくなり、インディゴの色も変わっていくはずです。
Geoffrey B. Smallの服は、買った瞬間だけで完結しません。
着ることで、ようやく自分の服になっていく。
このジャケットも、そういう一着だと思います。
世界で1着という事実は、もちろん特別です。
でも、それ以上に、この服は時間をかけて付き合いたくなる。
最初からすべてを見せる服ではなく、着ていく中で少しずつ分かってくる服です。
















