すでに完売しているアイテムのご紹介となり恐縮ですが、今回は少しだけお付き合いいただければと思います。
Archivio J.M.Ribotから届いた、2体のTIGOLO PUPPY。
いわゆる商品紹介というより、Archivio J.M.Ribotというブランドの考え方を、また違った角度から感じられるものとしてご紹介したいと思いました。
ぬいぐるみ。
ドール。
オブジェ。
どの言葉で呼んでも間違いではありません。
ただ、ひとつの言葉だけでは少し収まりきらないようにも感じます。
見た目は、小さな犬の人形です。
けれど近くで見ると、ただ可愛らしく作られた人形ではないことが分かります。
人形に着せられている洋服は、Archivio J.M.Ribotの服と同じ考え方で作られています。
生地を選び、裁断し、縫い、ボタンを付ける。
そのボタンにも、ヴィンテージのものが数多く使われています。
服の横に置くための飾りというより、Archivio J.M.Ribotのものづくりの延長にある、小さな存在です。
先日公開したKarim Faresのインタビューで、彼はArchivio J.M.Ribotを「衣服とオブジェのアルチザンプロジェクト」と話していました。
その言葉を思い出しながらTIGOLO PUPPYを見ると、このドールがなぜ作られているのか、少し分かる気がします。
Archivio J.M.Ribotは、服だけを作るブランドではありません。
古い生地。
古いボタン。
レース。
過去の衣服の一部。
アンティークのオブジェ。
そうした、時間を通ってきたものを集め、今の形へそっと移し替えていく。
Karimはインタビューの中で、物や人に刻まれた“時間の痕跡”に惹かれると話していました。
シミや傷。
不完全さ。
均一ではないこと。
どこかに残る、誰かの手の跡。
そうしたものを無理に消さず、そこにあるものとして大切にする。
TIGOLO PUPPYにも、その感覚があります。
モヘアの毛並みは、きれいに整いすぎていません。
表情も、分かりやすく愛らしいだけではありません。
少しすました顔にも見える。
どこか遠くを見ているようにも見える。
でも、見ているうちにだんだん親しみが湧いてくる。
その表情の曖昧さが、とてもArchivioらしいと思います。
ひとつ目のTIGOLO PUPPYは、黒い布を重ねたような帽子をかぶり、黒の服にブラウンのリボンを合わせたタイプ。
フロントには、色も形も異なるヴィンテージボタンが並んでいます。
茶色、黒、グレー、グリーン。
大きさも、素材感も少しずつ違います。
同じボタンをきれいに揃えるのではなく、ひとつひとつ違うものを合わせている。
でも、それが不思議と自然に見えます。
長い時間の中で集まってきたものが、この小さな服の前身頃にそっと留められているようです。
Karimはインタビューで、昔はボタンがひとつ無くなれば、その時手元にある別のボタンで付け替えていた、と話していました。
少なくとも、彼の祖母はそうしていたそうです。
このTIGOLO PUPPYの服には、その話と重なる部分があります。
完全に揃っていないからこそ、どこか生活の気配がある。
きれいに整えすぎないことで、物に時間が残っている。
もうひとつのTIGOLO PUPPYは、黒いニットキャップのような帽子に、白のストライプシャツ、黒いベストとパンツを合わせたタイプ。
こちらは、少し落ち着いた印象です。
白いシャツの襟がのぞき、その上に黒いベストが重なる。
パンツも黒でまとめられ、足元には布の重なりが見える。
人形の服でありながら、きちんとArchivio J.M.Ribotのスタイリングとして成立しています。
ただ小さく作った、というだけではありません。
シャツの襟の出方。
ベストのバランス。
ボタンの選び方。
パンツの裾の処理。
そして、ビーズ刺繍の細やかさ。
ひとつひとつに、Archivioの服と同じ目線が入っています。
このドールを見ていると、Archivio J.M.Ribotは、サイズが変わってもArchivioなのだと感じます。
人が着る服でも、犬の人形が着る服でも、根にある考え方は変わりません。
古い素材を使う。
手で作る。
不揃いな部分をそのまま残す。
そこに時間の跡を感じさせる。
その姿勢が、小さな人形の服にも丁寧に反映されています。
だからTIGOLO PUPPYは、ただ可愛いだけではありません。
もちろん、見た目の愛らしさはあります。
椅子に座らせても良いですし、部屋に置いておくだけでも少し空気が変わります。
でも、それだけで終わらないところが、このドールの良さです。
Archivio J.M.Ribotが服だけでなく、香水、人形、オブジェまで作る理由。
その一部が、この小さな姿の中にも感じられます。
Karimは、ヨーロッパの“ヴンダーカンマー”にも強く惹かれていると話していました。
珍しいもの。
記憶を持つもの。
異なる時代の断片。
そうしたものがひとつの空間に並ぶ場所。
TIGOLO PUPPYも、どこかその感覚に近い存在です。
服のようで、服ではない。
人形のようで、ただの人形でもない。
オブジェとして置けるけれど、そこにはArchivioの服作りがきちんと入っている。
その境目の曖昧さが、このドールをとてもArchivioらしく見せています。
Archivio J.M.Ribotの服をお持ちの方なら、このTIGOLO PUPPYを見た時に、どこかで同じ空気を感じていただけると思います。
古い布の表情。
ヴィンテージボタンの不揃いな並び。
手で縫われた小さな服。
整いすぎていない顔。
それらは、Archivioの服と同じ場所から生まれています。
そして、まだArchivio J.M.Ribotをよく知らない方にとっても、このドールはブランドを知る小さな入口になるかもしれません。
なぜ服のブランドが、ここまで丁寧に人形を作るのか。
その答えは、Archivio J.M.Ribotがそもそも服だけのブランドではないからです。
衣服とオブジェ。
記憶と素材。
過去と現在。
それらを行き来しながら、ひとつのものを作る。
TIGOLO PUPPYは、その考え方が小さな姿になったようなドールです。
今回入荷した2体は、どちらもすでに完売しております。
ご購入いただくことができない中でのご紹介となり恐縮ですが、Archivio J.M.Ribotの10周年シーズンを語る上で、やはり残しておきたいアイテムでした。
服と同じ方法で作られた、小さな服。
ヴィンテージボタンをまとった、フルハンドのドール。
飾るためだけではなく、Archivio J.M.Ribotというプロジェクトの一部として生まれた小さな存在。
TIGOLO PUPPY。
その小さな姿の中に、Karim Faresが大切にしている時間の痕跡と、Archivio J.M.Ribotの手仕事がやさしく残っています。













