Archivio J.M.Ribotから、黒のロングコートが届きました。
黒いウールのロングコート、と言ってしまえばとてもシンプルです。
ただ実物を見ると、その言葉だけでは少し足りません。
きれいに整いすぎていない。
けれど、粗いわけでもない。
黒のウールに、毛足のある襟と袖口。
内側には白地に細い線が入ったストライプのライニング。
胸元には、黒い布を重ねた花のような装飾。
派手なディテールではありませんが、ひとつひとつがあることで、普通の黒いコートとは違う見え方に。
この空気感が、Archivio J.M.Ribotらしさです。
デザイナーのKarim Faresは、インタビューの中で「時間に触れられたものには特別な美しさがある」と話していました。
Archivioの服は、古いものをただ懐かしむための服ではありません。
古い生地やパーツ、昔から続く手仕事。
そうしたものを、今着る服としてもう一度形にしている。
このコートにも、その考え方が自然に表れています。
表地はウール100%。
黒のウールですが、のっぺりした黒ではありません。
生地の表面にはわずかに毛羽があり、光の当たり方で少し表情が変わります。
新品のコートでありながら、最初から少し馴染みそうな黒。
そこがとても良いです。
襟と袖口には、毛足のある黒い素材が使われています。
同じ黒でも、身頃とは質感が違います。
襟元にこの素材が入ることで、顔まわりが少し柔らかく見える。
袖口も同じで、手元に少し温度が出ます。
そして画像でも分かるように、袖口から白いストライプの裏地が少し覗きます。
黒いコートの中から、少しだけ白が見える。
きっちり隠すのではなく、自然に見えてしまうような感じ。
Archivioの服は、こういう見え方がよく似合います。
すべてをきれいに揃えるより、少しずれている。
でも、そのずれが雑には見えない。
人の手が入っていることや、時間が通ったことが、そういう部分に残っているように感じます。
内側のライニングも印象的です。
白地に細いストライプ。
少し皺を含んだような表情があり、外側の黒とはまったく違う空気があります。
前を開けた時。
裾から少し見えた時。
袖口から覗いた時。
この白い裏地が入ることで、黒のコートが重くなりすぎません。
胸元の黒い布花も、このコートをただの黒いロングコートで終わらせない部分です。
綺麗に整えられたコサージュというより、古い服に付いていたものがそのまま残っているような雰囲気があります。
黒の中に沈んでいて、近くで見ると布の重なりや端の表情が分かる。
強く主張するわけではありませんが、あるとないとではコートの印象がかなり変わります。
続いて着用感を。
肩や身幅には余白がありますが、大きく見せるためのルーズさではありません。
身体から少し離れて、縦にすとんと落ちる。
横から見ても、背中から見ても、余計な力が入っていません。
背中は大きく面が取られていて、中央の線がまっすぐ下に落ちます。
この後ろ姿がとても良いです。
着用画像では、ワイドパンツと合わせています。
コートにもパンツにも分量がありますが、全体が重く見えすぎないのは、裾や袖口から白い裏地が少し見えているからだと思います。
黒の中に細い白が入ることで、少し抜けが生まれる。
このバランスが、このコートの面白いところです。
前を閉じると、黒いロングコートとしてすっきり見えます。
前を開けると、内側のストライプや中に着たシャツが見えて、少し軽さが出ます。
襟元はきっちり閉じても良いですし、少し開けてスカーフやシャツを見せても良いと思います。
このコートは、綺麗に着すぎなくてもいい服です。
袖口から裏地が少し出る。
裾から白が覗く。
胸元の花が黒の中に沈む。
そのくらいの自然な崩れがある方が、Archivioらしく見えます。
黒いロングコートは、冬の定番です。
でも、このLOOSE COATは、ただ便利な定番ではありません。
古いものの気配を残しながら、今の服としてちゃんと着られる。
そして、着る人の時間がまた少しずつ重なっていく。
そういうコートです。









